鏡餅にカビを出さないいちばんの近道は、暖房の風や湿気が当たらない涼しい場所に飾り、鏡開きのあとは小さく割って早めに冷凍することです。つきたての鏡餅は水分が多く、暖かい部屋に年末から2週間ほど置けば、カビにとっては好条件がそろってしまいます。この記事では、飾る前の下準備、飾っている間の置き場所、パック入りと生の鏡餅で違う点、鏡開き後の保存と食べ方を順に紹介します。カビが生えてしまったときに削って食べてよいかも、公的機関の案内をもとに説明します。
鏡餅にカビが生えやすい理由と、飾る前の下準備
鏡餅は年神様へのお供え物で、年末に飾り、年が明けてから下ろしていただきます。農林水産省の和食の紹介ページでは、鏡開きを1月11日としています(地域によっては4日や15日、20日に行うところもあります)。年末に飾るとすれば、2週間前後は部屋に出しっぱなしになる計算です。
内閣府の食品安全委員会は、食べ物のカビを防ぐポイントとして「清潔・低温・乾燥・密閉」を挙げています。飾っている鏡餅は、むき出しで空気に触れ続けるうえ、暖房の効いた部屋に置かれやすく、四つのうち「低温」と「密閉」が欠けがちです。カビを防ぐには、残りの「清潔」と「乾燥」をしっかり押さえ、置き場所で「低温」に近づけるのが現実的です。
飾る前にしておきたいこと
- 手と台を清潔にする:餅に触る前に手を洗い、三方や台、敷き紙のほこりを払っておく
- 表面の水気を飛ばす:つきたてやお店で買った生の鏡餅は、表面がしっとりしていることがあります。乾いた清潔な布巾をかぶせ、涼しい場所でしばらく置いて表面を落ち着かせてから飾ります
- 包装のまま放置しない:生の鏡餅を袋に入れたまま暖かい部屋に置くと、内側に水滴がつきやすくなります。飾るまでは涼しい場所で保管します
- 飾りの果物は様子を見る:上にのせる橙やみかんが傷むと、その周りが湿りやすくなります。傷みが出たら早めに取り替えます

飾っている間のカビ対策|置き場所と、パック入り・生の鏡餅の違い
飾っている間にできることは、ほぼ「どこに置くか」で決まります。次の場所は避けると安心です。
- エアコンやファンヒーターの風が当たる場所、ストーブの近く(温まるうえに表面が急に乾いてひびが入りやすい)
- 加湿器の近く、結露しやすい窓際、水まわりに近い場所(湿気がこもる)
- テレビや冷蔵庫の上など、家電の熱がこもる場所
反対に、暖房を入れない部屋や、床の間、玄関のように少しひんやりする場所は向いています。日中に日が差し込んで温まる棚より、日の当たらない棚のほうが落ち着きます。
パック入りの鏡餅と、生の鏡餅で違う点
| 種類 | カビの心配 | 扱い方のポイント |
|---|---|---|
| パック入り(鏡餅の形の容器に個包装の餅が入っているもの) | 未開封なら中の餅は空気に触れないので、生の鏡餅より心配は少ない | 容器や袋に穴をあけない。食べる時期と保存方法はパッケージの表示に従う |
| 生の鏡餅(つきたて・和菓子店などで買ったもの) | むき出しなので、置き場所しだいでカビが出やすい | 涼しい場所に飾り、毎日表面を見る。気になるなら鏡開きを待たず早めに下ろす選択もある |
生の鏡餅は、飾っている間に表面が乾いてひび割れが入ることがあります。ひびの奥は目で確かめにくいので、ひびが目立ってきたら、ほかの部分も含めて毎日見ておくと異変に早く気づけます。
毎日見ておきたいサイン
カビは小さな点から始まるので、朝に一度、正面と横、上の段との境目をざっと見る習慣をつけると、変化に気づきやすくなります。
- 緑や青、黒、赤っぽい色の小さな点が出ていないか
- 白くふわふわした綿のようなものが付いていないか(打ち粉の粉っぽさとは違い、盛り上がって見える)
- 上にのせた橙やみかん、下に敷いた紙が湿っていないか
- ひびの中や、上下の餅が重なっている部分の色が変わっていないか
粉なのかカビなのか判断に迷うものは、食べない側に倒しておくのが安全です。

鏡開きのあとの保存|小さく割って冷凍するのが基本
鏡開きでは、お供えに刃物を向けるのは縁起が悪いとして、包丁を使わず木づちなどでたたいて割り、「割る」ではなく「開く」と言います。農林水産省のページでも、下ろした鏡餅は捨てずに食べることが大切だと紹介されています。
かたくて割れないとき
表面が乾いてかちかちになった鏡餅は、たたいてもなかなか割れません。そのときは、水に半日ほど浸けてから、電子レンジで様子を見ながら少しずつ温めると、手でちぎれるくらいに柔らかくなります。温めすぎると溶けたように広がるので、短い時間で何度かに分けるのがこつです。
その日のうちに食べる分の食べ方
農林水産省のページでは、下ろした鏡餅を焼く、電子レンジで柔らかくする、バターとしょうゆで味をつける、ぜんざいにする、納豆や大根おろしをのせる、といった食べ方が紹介されています。かけらが小さくて焼きにくいときは、煮る料理に入れると形がそろわなくても気になりません。
割ったあとの保存の手順
- 1回に食べる量に分ける:雑煮やぜんざいに使う量ごとに、小さめのかけらにまとめます
- 表面の水気をふく:水に浸けた場合は、清潔なキッチンペーパーで水気をよくふき取ります
- 1回分ずつラップで包む:空気に触れないよう、ぴったり包みます
- 保存袋に入れて冷凍する:空気を抜いて口を閉じ、冷凍室へ。食べるときは凍ったまま焼くか、煮る料理に入れます
数日のうちに食べ切るなら冷蔵庫でもかまいませんが、冷蔵庫に入れた餅は乾いてかたくなりやすいので、ラップで包んでから入れ、早めに使います。すぐに食べない分は、最初から冷凍に回すほうが扱いやすくなります。

よくある質問
Q. カビが生えた部分だけ削れば食べられますか?
A. 食べないでください。食品安全委員会は、見えているカビを取り除いても、カビやカビ毒が残っているかもしれないこと、カビ毒は熱に強く加熱してもなくならないことを挙げ、カビが生えた食べ物は食べないよう呼びかけています。群馬県の食品・生活衛生課も、もちのカビについて、カビが無いように見える部分にも生えていることがあるとして、食べるのはやめるよう案内しています。もったいなく感じますが、カビが出た鏡餅は食べずに処分します。
Q. 飾る前にできるだけ長持ちさせたいのですが、冷蔵庫に入れておけばよいですか?
A. 飾るまでの数日なら、包装したまま冷蔵庫など涼しい場所に置くのは一つの方法です。ただし、冷えた餅を暖かい部屋に出すと表面に水滴がつくことがあるので、出したあとは表面が乾いているかを確かめてから飾ります。パック入りの鏡餅は、パッケージに書かれた保存方法に従ってください。
Q. パック入りの鏡餅の中の餅は、いつまで食べられますか?
A. 商品ごとに期限と保存方法が決まっているので、パッケージの表示で確かめるのが確実です。開けたあとは中の餅も空気に触れるので、生の餅と同じく早めに食べるか、1回分ずつ包んで冷凍します。
Q. 鏡開きは1月11日に必ずしないといけませんか?
A. 一般には1月11日とされますが、松の内の期間の違いなどから、地域によっては15日や20日、京都の周辺では4日に行う家もあります。住んでいる地域や家の習わしに合わせてかまいません。生の鏡餅にカビが出そうなら、日にちを待たずに早めに下ろすのも現実的です。

まとめ
鏡餅のカビを防ぐ保存方法は、次の三つに集約できます。
- 飾る前:手と台を清潔にし、表面の水気を落ち着かせてから飾る
- 飾っている間:暖房の風・加湿器・結露する窓際を避け、涼しい場所に置いて毎日表面を見る
- 鏡開きのあと:1回分ずつに分けてラップで包み、保存袋に入れて冷凍する
そして、カビが生えてしまった鏡餅は、削らずに食べないのが原則です。下ろした鏡餅は、焼いて雑煮やぜんざいに入れれば、年明けのうちにおいしく食べ切れます。
参考にした資料:農林水産省「1月11日は鏡開き」(Let’s!和ごはんプロジェクト)、内閣府食品安全委員会「キッズボックス」2023年5月(PDF)、群馬県 食品・生活衛生課 広報(2018年12月、PDF)
今年の鏡餅は、飾る前に「暖房の風が当たらない涼しい場所」を一つ決めておくところから始めてみてください。


