鍋のアクは、肉や魚を入れてつゆがもう一度煮立った直後に、表面に集まった灰色がかった泡だけをすくえば十分です。アクの多くは、肉や魚から溶け出したたんぱく質などが熱で固まったものとされ、残すとつゆが濁ったり、臭みが出たりします。一方で、透き通った黄色い脂はつゆのコクでもあるので、全部すくう必要はありません。鍋の前に付きっきりになることもなく、すくうのは3回ほどで足ります。この記事では、鍋のアク取りが必要な場合と取るタイミングを、アクの正体、鍋の種類ごとの目安、取りすぎない加減、道具の使い方の順に紹介します。
アクの正体は?表面に浮く灰色がかった泡と、取る理由

アク(灰汁)は、食材を煮たときに出てくる、えぐみ・渋み・臭みのもとや、表面に浮く泡をまとめて呼ぶ言葉です。鍋料理で「アクを取る」と言うときは、たいてい肉や魚を入れて煮立ったときに浮いてくる、灰色がかった泡のかたまりのことを指します。
肉や魚のアクと、野菜のアクは別のもの
| 種類 | 主な中身 | 鍋での見え方 | 扱い方 |
|---|---|---|---|
| 肉・魚のアク | 肉や魚の表面・切り口から溶け出したたんぱく質や血の成分が、熱で固まったものとされる。脂も混ざる | 灰色〜茶色がかった泡になって浮く。残すとつゆが濁り、臭みが出やすい | 煮立ったところで、表面からすくう |
| 野菜のアク | ほうれん草のシュウ酸、ごぼうやれんこんのポリフェノール類など、えぐみや渋みの成分 | 泡としてはあまり浮かず、つゆに溶けてえぐみや色のくすみになる | 気になる野菜は、下ゆでや水さらしで先に減らしておく |
肉や魚のアクは、食べてすぐ体に悪いものではないと考えられています。取る理由はおもに、つゆを濁らせないこと、臭みやえぐみを残さないことで、味と見た目のための作業です。完ぺきに取り切ろうとしなくてかまいません。
アクと脂は見た目で見分ける
- アク:細かい泡が寄り集まり、灰色がかったふわっとしたかたまりになって浮く。具によって白っぽいものから茶色っぽいものまである。放っておくと鍋の縁にこびりつく
- 脂:透き通った黄色っぽい油の粒や薄い膜。鶏肉や豚バラから出やすく、つゆのコクになる
迷ったら「泡になっているものはすくう、透き通った油の粒は残す」と覚えておくと、手早く判断できます。脂までていねいにすくうと、つゆの味が物足りなくなります。あっさり食べたい日だけ、脂も少し取るくらいでちょうどよいでしょう。
アク取りが必要な鍋と、あまり気にしなくていい鍋

どれだけアクが出るか、出たアクが目立つかどうかは、入れる具とつゆの味で変わります。よく作る鍋で分けると、目安は次のとおりです。
| 鍋の種類 | アク取りの目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 水炊きなど、骨付きの鶏肉を煮る鍋 | 取ったほうがいい | 骨付き肉やぶつ切りから多く出やすい。スープそのものを味わう鍋なので、濁りや臭みが目立つ |
| 寄せ鍋やちり鍋など、たら・ぶり・えびといった魚介の入る鍋 | 取ったほうがいい | 魚の臭みがつゆに移りやすい。澄んだだしなので泡もよく見える |
| しゃぶしゃぶ | 途中でこまめに | 肉をくぐらせるたびに少しずつ出て、湯にたまっていく |
| 豚肉や牛肉の薄切りが中心の鍋 | 気になる分だけ | 量は多くないが、澄んだつゆでは浮いた泡が見える |
| キムチ鍋、カレー鍋、味噌味の鍋 | あまり気にしなくてよい | アクは出るが、つゆの色と味が濃いので目立ちにくい。大きなかたまりだけ取れば十分 |
| 湯豆腐、野菜やきのこだけの鍋 | ほとんど要らない | 肉や魚が入らなければ、浮く泡はわずか |
同じ寄せ鍋でも、肉や魚の量が多いほど、また骨付きや皮付きのものが多いほど、アクは多くなりがちです。反対に、つゆを最後まで飲まない味の濃い鍋なら、そこまで神経質にならなくて大丈夫です。
アクの多い具は、下ごしらえで先に減らす
鍋に入れてからすくう量を減らしたいときは、アクの出やすい具だけ下ごしらえしておくと楽になります。
- 骨付きの鶏肉・手羽:熱湯にくぐらせ、表面が白っぽく変わったら引き上げて水で洗う。骨のまわりに血のかたまりが残っていれば取り除く
- 魚の切り身・あら:塩を軽く振って10分ほど置き、出てきた水けをふき取る。あらは熱湯をかけて表面が白くなったら冷水にとり、うろこや血を洗い流す(霜降り)
- ほうれん草:えぐみが気になるなら、さっと下ゆでして水にとり、水けを絞ってから入れる
- ごぼう:ささがきにしたら、水にさっとさらす。長くさらすと香りが抜けるので、変色を防ぐ程度で十分
- 里芋:下ゆでしてぬめりを洗い流しておくと、つゆが濁りにくく、吹きこぼれもしにくい
白菜、ねぎ、大根、きのこ、豆腐などは、下ごしらえなしでそのまま入れてかまいません。
取るタイミングは肉や魚が煮立った直後|取りすぎない加減と道具の使い方

すくうのは3回が目安
アクがまとまって浮いてくるのは、肉や魚を入れて、つゆがもう一度煮立ったときです。食べているあいだずっと鍋に付きっきりになる必要はなく、次の3回を押さえれば十分です。
- 肉や魚を入れて、再び煮立ったとき:いちばん多く出る。野菜や豆腐を入れる前にここでしっかり取っておくと、あとで具のすき間に入り込んだ泡を追いかけずに済む
- 具を足して、また煮立ったとき:食卓で肉や魚を追加したら、そのたびに一度さっとすくう
- 〆の前:雑炊やうどんを入れる前に、残った泡と浮いた脂を軽く取っておくと、仕上がりがきれいになる
肉や魚は、つゆが煮立ってから入れるのが基本です。ぬるいうちに入れると、アクが少しずつ出続けてすくうタイミングをつかみにくいとされます。
ぐらぐら煮立てたままにしない
強火でぐらぐら煮立て続けると、浮いた泡が対流で砕けてつゆに混ざり、すくいにくくなります。アクが浮いてきたら火を弱め、表面が静かに揺れるくらいにしましょう。泡が鍋の縁や真ん中に寄ってくるので、そこを狙ってすくいます。
取りすぎない加減
- すくうのは泡のかたまりだけ。透き通った脂の粒は、網の縁でよけるようにして残す
- おたまや網を深く沈めず、表面をなでるように浅くすくう。つゆごと何杯もすくうと、つゆもうま味も減っていく
- 泡が細かく散らばって寄ってこなくなったら、終わりの合図。小さな泡を1つ残らず追いかける必要はない
- 煮ているうちにまた少し浮いても、量がわずかならそのままでよい
道具は網じゃくしと、水を張ったボウル
| 道具 | 向いている場面 | 使い方のコツ |
|---|---|---|
| 網じゃくし(アク取り用の目の細かい網) | 泡だけを取りたいとき。つゆは網目から落ちるので減りにくい | 1回すくうたびに、水を張ったボウルの中で軽く振り洗いする。網目が詰まらず、次もすくいやすい |
| おたま | 網じゃくしがないとき。脂も一緒に少し取りたいとき | 表面をなでるように浅く入れる。すくったものは別の器に空け、おたまも水でゆすぐ |
| キッチンペーパー | 浮いた脂を薄く取りたいとき | 台所のコンロで火を止めてから、表面にそっとのせてすぐ引き上げる。紙が炎に触れないよう、卓上コンロの上では使わない |
食卓で鍋をするときは、網じゃくしと水を張った小さなボウルを鍋の横に置いておくと、具を足したついでにさっと取れます。ボウルの水が濁ってきたら、取り替えましょう。
よくある質問

アクを取り忘れたつゆは、食べても大丈夫ですか?
取り忘れたからといって、食べられなくなるものではないとされています。つゆが濁ったり、臭みやえぐみを感じやすくなったりするだけなので、気づいた時点ですくえば十分です。ただし、肉や魚の中まで火が通っているかどうかは、アクとは別に必ず確かめてください。
豆乳鍋の表面にできる膜も、アクですか?
豆乳を温めると表面にできる薄い膜は、豆乳のたんぱく質が固まった湯葉で、アクではありません。取らずに具と一緒に食べてかまいません。豆乳鍋では、だしで肉や魚を煮てアクを取ってから豆乳を加えると、白いつゆの中で灰色の泡を探さずに済みます。
しゃぶしゃぶのアクは、いつ取ればいいですか?
しゃぶしゃぶは、肉をくぐらせるたびに少しずつアクが出て、湯にたまっていきます。何枚かくぐらせたら一度、表面に寄った泡をすくう、くらいの間隔が目安です。湯が減ってきたら、だしや湯を足しましょう。
すくったアクは、どう捨てればいいですか?
ボウルの水にたまったアクは、水ごと流しに捨ててかまいません。脂がたくさん浮いているときは、キッチンペーパーで脂を吸わせてから紙をごみに出すと、排水口や配管が汚れにくくなります。紙の出し方は、お住まいの自治体の分別の案内も確認してください。
まとめ

鍋のアクは、全部を取り切るものではなく、出たときに要る分だけすくうものです。最後にポイントを振り返ります。
- アクは、肉や魚から出たたんぱく質などが熱で固まって浮いた、灰色がかった泡。取るのはおもに味と見た目のため
- 水炊きや魚介の鍋、しゃぶしゃぶは取ったほうがいい。キムチ鍋や味噌味の鍋は大きなかたまりだけ、湯豆腐はほとんど要らない
- すくうのは、肉や魚を入れて再び煮立ったとき、具を足して煮立ったとき、〆の前の3回が目安
- 煮立ったら火を弱め、寄ってきた泡だけを浅くすくう。透き通った脂はコクなので残す
- 網じゃくしは、水を張ったボウルで振り洗いしながら使う
次に鍋をするときは、網じゃくしと水を張ったボウルを先に鍋の横へ用意して、肉や魚を入れて煮立ったところで一度すくうところから始めてみてください。

