コートのボタンがぐらぐらしてきたら、取れて落とす前に付け直しましょう。やり方は、古い糸を切って外し、元と同じ位置に、ボタンつけ用の太い糸で付け直すだけです。シャツのボタンと違うのは、厚い生地に合わせてボタンと布の間に「糸足」と呼ばれるすき間を作ること、そして裏に小さな「力ボタン」が付いていれば、それも一緒に留めることの2点です。この記事では、糸を切る前に確かめておくこと、厚地に合う糸と針の選び方、穴ボタンと足付きボタンの付け方、自分で直さず店に頼んだほうがよい場合を順に説明します。
取れそうなボタンは、糸を切る前に元の付き方を見ておく
ボタンを指でつまんで軽く引くとぐらぐらする、ボタンと布の間の糸が伸びて細くなっている、糸がほつれて毛羽立っている。こうなったら付け直しどきです。コートのボタンは大きく、色や形がそろった専用品であることが多いので、道で落としてなくすと、同じものを探すのに苦労します。
付け直す前に、今の付き方を確かめておきます。コートには、シャツのボタンにはない作りがいくつかあるからです。スマートフォンで表と裏を1枚ずつ撮っておくと、糸を切ったあとでも迷いません。
- ボタンの種類:表に穴があいた「穴ボタン」(2つ穴・4つ穴)か、表に穴がなく、裏に小さな輪(足)が付いた「足付きボタン」か
- 糸足の長さ:ボタンと布の間に、どのくらいすき間があるか
- 4つ穴の糸のかけ方:糸が「=」の形に平行に渡っているか、「×」の形に渡っているか
- 裏側の力ボタン:身頃の内側、表のボタンの真裏に、小さなボタンが付いているか
- 付いている位置:糸を切ると位置が分からなくなるので、チャコペンやまち針で印をつけておく
替えボタンがあるか、先に探す
コートには、予備のボタンが付属していることがあります。内側の裾や脇の縫い目のあたり、洗濯表示のタグの近くに縫い留めてあったり、買ったときの小袋に入っていたりします。取れかけたボタンが割れていたり欠けていたりしたら、この機会に替えボタンと交換しましょう。
古い糸の外し方
ボタンがまだ付いているなら、ボタンと布の間の糸の部分に、糸切りばさみの先を差し込んで切ります。ボタンを少し持ち上げて、糸だけをすくってから刃を閉じると、布を切らずに済みます。リッパー(糸を切るための小さな道具)を使う場合も、刃先を布に向けないようにします。裏に残った糸くずは、毛抜きなどでていねいに抜き取ります。古い糸を残したまま上から縫うと、裏がごろつきます。

用意する道具と、厚地のコートに合う糸・針
道具は、家にある裁縫箱でほとんどそろいます。足りないことが多いのは、ボタンつけ用の太い糸です。
| 道具 | 使いみち・選び方 |
|---|---|
| ボタンつけ用の糸 | 普通の手縫い糸より太く丈夫な糸。色はボタンか生地に合わせる |
| 手縫い針 | 太い糸が通る、針穴の大きめのもの |
| 糸切りばさみ(またはリッパー) | 古い糸を切る。仕上げに余った糸を切る |
| 指ぬき | 厚い生地に針を押し込むとき、指を守る |
| チャコペン・まち針 | ボタンを付ける位置の印 |
糸は「ボタンつけ用」の太いものを
手芸糸メーカーのフジックスは、ボタンをつけるときは手縫いより太めの糸を選ぶよう案内しています。素材で使い分けるなら、木綿や麻の布地にはカタン糸、絹地やコート、スーツには絹穴糸が基本とされる一方で、木綿などの天然繊維はあまり強度がなく、切れてしまうこともあると書かれています。そのうえで、しっかり付けたいならボタンつけ専用のポリエステル糸をすすめています。
同社の「ハイスパンボタンつけ糸」は、#30が薄地用、#20が普通地・厚地用と太さが分かれていて、#20に合う針はメリケン針の5〜7号とされています。ウールのコートのような厚い生地なら、厚地にも使える太さを選んでおくと安心です。ほかのメーカーの糸を使う場合も、パッケージで対応する生地の厚さを確かめてから選びましょう。

穴ボタンを、糸足をつけて付け直す手順
2つ穴・4つ穴のボタンは、次の手順で付け直します。フジックスが紹介している付け方をもとに、コートで気をつけたい点を加えました。
まず「糸足」の長さを決める
糸足とは、ボタンと布の間に作る、糸を巻いた短い柱のことです。ボタンを留めたとき、ボタン穴のある側の布がこのすき間に収まるので、ボタンがとめやすく、きれいに落ち着きます。フジックスによると、長さは布地の厚みを考えて決め、普通地のシャツで0.3cm程度が目安です。コートは前身頃の布がずっと厚いので、シャツより長めの糸足が要ります。元のボタンの糸足と同じくらいにするか、ボタン穴のある側の布をつまんで、その厚みを目安にしましょう。
- ボタンつけ用の糸を針に通して玉結びをし、印の位置を表側から小さくひと針すくう。針は布に対して垂直に刺す
- ボタンを布から少し浮かせて持ち、ボタンの穴と布に2〜3回ずつ糸を通して渡す。浮かせた高さが糸足の長さになる
- 針をボタンと布の間に出し、糸足に上から下へすき間なく糸を巻きつける
- 巻き終わったら、最後にできた輪に針をくぐらせて、糸を引き締める
- 針を裏側に出して玉止めをし、もう一度表側に針を出して、余った糸を切る
手順1で針を垂直に刺すのには理由があります。フジックスは、針を斜めに入れると布地と糸がこすれて糸が切れやすくなり、ボタンが取れる原因になると説明しています。厚いコートの生地は針が通りにくく、つい斜めに抜きたくなりますが、指ぬきで針の頭を押して、まっすぐ通しましょう。
4つ穴ボタンの糸のかけ方
フジックスの案内では、4つ穴ボタンは好みの方法で糸をかけ、あとは2つ穴と同じようにつけるとされています。「=」の形に平行に渡す形と、「×」の形に渡す形がありますが、ほかのボタンとそろえるのがいちばん自然です。最初に撮った写真を見て、元と同じかけ方にしましょう。
足付きボタンの場合
表に穴がなく、裏に輪のような足が付いたボタンは、フジックスの案内では次の順で付けます。
- ボタンの足に糸を通し、足の根もとで糸端に針をくぐらせて、ボタンに糸を留める
- 足が布に対して垂直になるように置き、布をすくっては足に糸を通す、を数回くり返す
- 糸足に糸を数回巻き、最後の輪に針をくぐらせて引き締める
- 糸の始末は穴ボタンと同じく、裏で玉止めをして表で切る
足があるぶんボタンはもともと布から浮いていますが、元のボタンが糸足をつけて付いていたなら、同じくらいの長さにそろえましょう。
裏に力ボタンが付いていた場合
コートの前のボタンの真裏、身頃の内側に付いている小さなボタンを、力ボタンといいます。ボタンを留め外しするたびにかかる力を裏側で受け止めて、表の布だけが引っぱられて傷むのを防ぐためのものです。付いていたなら、付け直すときも省かずに使います。
付け方は、表のボタンと力ボタンを1本の糸でつなぐイメージです。表のボタンの穴から布を通して裏へ針を出し、力ボタンの穴に通して、また表のボタンへ戻る、をくり返します。糸足は表のボタン側にだけ作り、力ボタンは裏の布に沿わせておきます。ただ、糸の通し方はコートによって違うことがあるので、最初に撮った写真と同じ順で通すのが確実です。
袖口の飾りボタンは糸足をつけない
袖口など、留めることのない飾りのボタンは扱いが違います。フジックスは、デザイン上のアクセントとしてつける飾りボタンは、重みでボタンが下がってしまうので糸足をつけないと説明しています。布に沿わせて、ぴったり付けましょう。

よくある質問
ボタンをなくしてしまったときは?
まずは、替えボタンが付属していないか探します。見つからなければ、残っているボタンを1つ持って手芸店に行き、大きさ(直径)と色、穴の数や足の有無が合うものを探しましょう。同じものが見つからないときは、いちばん下など目立たない位置のボタンを外して取れた位置に回し、空いた位置に似たボタンを付ける方法もあります。
普通の手縫い糸でも代わりになりますか?
応急処置には使えますが、手縫い糸はボタンつけ用の糸より細く、フジックスもボタンつけには手縫いより太めの糸を選ぶよう案内しています。手縫い糸で付けるなら、針に通した糸の両端をそろえて2本で縫う「2本どり」にして、糸を渡す回数を多めにする方法がよく紹介されています。ボタンつけ用の糸が手に入ったら、あらためて付け直すと安心です。
ボタンの周りの布が破れていたら?
糸が抜けた跡が穴になっていたり、布が裂けていたりする場合は、その上にボタンを付けても、また同じところから取れてしまいがちです。裏から布を当てて補強するなどの処置が必要になるので、洋服のお直しの店に相談するのが確実です。カシミヤなどの高価なコートや、革でくるんだボタン、金属の飾りボタンのように扱いに迷うものも、無理に自分で直さず相談しましょう。
ほかのボタンもゆるんでいる気がします
同じ時期に同じ糸で付けたボタンは、同じように糸が傷んでいることがあります。1つ付け直したついでに、残りのボタンも指でつまんで軽く引き、ぐらつきや糸のほつれがないか確かめましょう。クリーニングに出す前やしまう前に見ておくと、次の冬に慌てずに済みます。出す時期の考え方は「コートをクリーニングに出す時期と頻度|基本はしまう前の1回、シーズン中は汚れとにおいで判断」で詳しく説明しています。

まとめ
コートのボタンが取れそうなときの付け直し方をおさらいすると、ポイントは次のとおりです。
- ぐらつきに気づいたら早めに直す。糸を切る前に表と裏の付き方を撮り、位置に印をつける
- 糸はボタンつけ用の太いものを、厚地にも使える太さで選ぶ
- 穴ボタンは針を垂直に刺し、布の厚みに合わせた糸足をつけて、すき間なく巻いてから玉止めする
- 足付きボタンも糸足を巻いて引き締める。力ボタンが付いていたら、表のボタンと一緒に留める
- 袖口の飾りボタンは糸足をつけない。布が破れているときや高価なコートは、お直しの店に相談する
ボタンの付け直しは、針と糸と少しの時間があれば家でできる修理です。まずは今日、玄関に掛けてあるコートのボタンを1つずつ軽く引いて、ぐらつくものがないか確かめてみてください。


