ローストビーフのフライパンでの作り方と火の通し方|中心温度を測ってしっとり安全に仕上げる手順

ローストビーフのフライパンでの作り方と火の通し方のイメージ画像 料理・食材保存

ローストビーフはオーブンがなくても、フライパンとふたがあれば家庭で作れます。ただし、表面を焼いてアルミホイルで包み、余熱で仕上げる作り方では中心の温度が十分に上がりません。大事なのは、焼き色を付けたあとも弱火で加熱を続け、中心温度計で火の通りを確かめることです。家庭で牛の塊肉を加熱するときは、中心が63℃で30分、65℃なら15分といった条件を守ります。この記事では、肉の選び方から焼き方の手順、温度と時間の目安、失敗したときの対処までを順に紹介します。

失敗しにくい肉の選び方と焼く前の下準備

フライパンで仕上げるなら、肉の形がいちばん結果を左右します。厚い塊ほど中心まで熱が届くのに時間がかかり、外側だけが焼けすぎてしまうからです。最初の1回は、扱いやすい大きさの塊を選ぶのがおすすめです。

選ぶなら牛ももの塊、厚さは4〜5cmまで

  • 部位:脂の少ない牛ももの塊(内ももやしんたま)が定番です。赤身でも、薄く切れば柔らかく食べられます
  • 大きさ:300〜500g程度で、厚みが4〜5cmまでのもの。食品安全委員会の調査でも、牛もも肉は厚みが3cmから6cmになると、同じ温度に達するまでの時間が大きく延びています
  • 形:太さがそろった円柱や直方体に近いもの。端が細く尖っていると、そこだけ火が入りすぎます
  • 鮮度:買ってきたらなるべく早く使います。冷蔵庫で長く置くと、表面の菌が肉の内側へ入り込むことがあるとされています

この表示がある肉は使わない

「成形肉」「結着」「やわらか加工(テンダライズ)」「調味液を注入」などと書かれた肉は、ローストビーフには向きません。いずれも表面の菌が内側に入り込んでいるおそれがあり、中心部までしっかり加熱することが前提の肉です。塊のまま赤みを残して食べる料理には、加工していない一枚の塊肉を使います。

同じ理由で、味をしみ込ませようとフォークで刺したり、包丁で切れ目を入れたりするのもやめておきます。表面にいる菌を、熱が届きにくい内側へ押し込んでしまうからです。

下準備は「水気を拭く・塩こしょう・少し置く」だけ

  1. キッチンペーパーで肉の表面の水気を拭き取る
  2. 焼く直前に、塩(肉の重さの1%前後が目安)と粗びき黒こしょうを全面にまぶす
  3. 冷蔵庫から出してすぐだと中心が冷たく、温度が上がるまでに時間がかかります。20〜30分ほど置いてから焼き始めると扱いやすくなります。ただし暑い部屋に長く出しっぱなしにはしません

生肉を触った手やトング、まな板は、焼き上がった肉に使う前に洗っておきます。切り分けるときに生肉のまな板を使い回すと、せっかく加熱した肉に菌が付いてしまいます。

木のまな板にのせた牛ももの塊肉と、塩と黒こしょう

フライパンで焼く手順:表面を焼いたあと、ふたをして加熱を続ける

よく見かけるのは「表面を焼いたらアルミホイルで包んで置いておく」という作り方ですが、これは中心の温度が十分に上がりません。フライパンで作るときは、表面を焼いたあとも弱火で加熱を続け、中心温度を測って仕上げます。

用意するもの

  • ふたのできるフライパン(直径20〜26cm。厚手のものだと温度が安定します)
  • トング
  • 肉に刺して測る中心温度計(スティック型のデジタル温度計)
  • アルミホイル、清潔なまな板と包丁

焼き方の流れ

  1. 表面を焼き固める:フライパンにサラダ油を小さじ1ほど入れて中火で温め、肉を入れます。1面につき1〜2分ずつ、側面や端も含めて全面に焼き色を付けます。表面の菌を加熱することにもなるので、焼き残しの面を作らないようにします
  2. 弱火にしてふたをする:全面が焼けたら弱火に落とし、ふたをします。フライパンの中をオーブンのように温めて、外側からじわじわ熱を入れるイメージです
  3. ときどき転がす:3〜4分おきに肉の向きを変えます。下の面だけが焼けすぎるのを防ぎ、熱を均等に入れるためです。焦げそうなら火をさらに弱めるか、水を大さじ2ほど加えます
  4. 中心温度を測る:いちばん厚い部分の真ん中に、横から温度計を刺して測ります。400g・厚さ4cmほどの塊なら、ふたをしてから20〜30分前後が最初に測るタイミングの目安です
  5. 目標の温度に達したら、その温度を保つ:次の章の表の温度と時間を守ります。保つ間もごく弱火とふたはそのまま。何度か測って、温度が下がっていないかを確かめます
  6. 火から下ろして休ませる:必要な時間を保てたら、アルミホイルで包んで15〜20分ほど置きます。この段階のホイルは加熱のためではなく、肉汁を落ち着かせて切ったときに流れ出にくくするためです

時間はあくまで目安で、肉の厚み、フライパンの材質、コンロの火力で大きく変わります。最後は必ず温度計の数字で判断してください。

焼き色を付けたあと、アルミホイルで包んで休ませている塊肉

火の通りは中心温度で確かめる:温度と時間の目安

ローストビーフの火の通し方で、いちばん大事なのがこの章です。見た目や指で押した弾力、竹串を刺して唇に当てる方法では、安全かどうかは判断できません。食品安全委員会の解説では、温度に達したばかりの肉と、殺菌に必要な時間を保った肉は、切った断面を比べても外観で区別できなかったとされています。

家庭で守りたい加熱の目安

家庭や飲食店で牛の塊肉を加熱するときは、中心部を63℃で30分以上、またはこれと同等以上の加熱が必要とされています。中心温度が75℃で1分間の加熱と同じ効果がある組み合わせは、次のとおりです。

中心温度 その温度を保つ時間
63℃ 30分
65℃ 15分
66℃ 11分
67℃ 8分
68℃ 5分
69℃ 4分
70℃ 3分
75℃ 1分

時間は「中心がその温度に達してから」数えます。火にかけていた時間の合計ではありません。フライパンで63℃を30分ちょうどに保つのは火加減が難しいので、65℃で15分や68℃で5分を目標にすると管理しやすくなります。保っている途中で温度が上がる分には問題ありません。

「58℃で28分」はお店で売るローストビーフの基準

ネットのレシピでは、もっと低い温度が紹介されていることがあります。これは事業者がローストビーフを製造販売するときの規格で、特別な条件で厳しく管理された原料肉を使うことが前提です。スーパーで買う肉はこの前提を満たしていないので、家庭では表の温度と時間を守ります。食品安全委員会も、2024年3月に牛肉の加熱条件の説明をこの形に改めています。

中心温度計の正しい刺し方

  • 上からではなく、横からいちばん厚い部分の真ん中に向けて刺す
  • 先端がフライパンに当たっていないか確認する(当たると高く出る)
  • 1か所だけでなく、少し位置を変えて2〜3か所測り、いちばん低い数字を採る
  • 使う前と使ったあとは、先端を洗ってから拭いておく

中心温度を高めにするほど、断面の赤みは薄いピンク寄りになります。しっとりした食感を残したいなら、温度を上げすぎず、時間で殺菌の条件を満たす考え方です。

ふたをして弱火で加熱を続けるフライパンと、中心温度計

よくある質問

Q. 温度計がないと作れませんか?

A. 赤みを残して仕上げる料理なので、温度計なしで安全を確かめる方法はありません。竹串の温かさや肉の弾力は目安になりません。料理用のスティック型の温度計を1本用意するのが確実です。揚げ物や低温調理、ローストチキンにも使えます。どうしても無い場合は、薄く切ってから中まで色が変わるまで焼き、ステーキ風にして食べるほうが安全です。

Q. 表面を焼いてアルミホイルで包み、余熱で火を通す方法ではだめですか?

A. 食品安全委員会は、塊肉の表面を焼いたあとホイルで包んで置くような、余熱だけに頼るレシピはやめるよう呼びかけています。中心の温度が、食中毒を防げるほどには上がらないためです。ホイルで包むのは、表の温度と時間を満たしたあとに肉汁を落ち着かせる目的に限ります。

Q. 切ってみたら中が冷たく、生っぽい色でした。どうすればいいですか?

A. 塊のまま切り口が少ない状態なら、フライパンに戻してふたをし、弱火で中心温度を測りながら加熱し直します。すでに薄く切ってしまった場合は、1枚ずつフライパンでさっと両面を焼くか、肉どうふや牛丼の具などに回して、中まで火を通して食べます。

Q. 作り置きはできますか? ソースはどう作ればいいですか?

A. 粗熱が取れたら塊のままラップで包み、清潔な保存容器に入れて冷蔵庫へ。食べる分だけ切り、なるべく早く食べきります。ソースは、焼いたあとのフライパンにしょうゆ・みりん・すりおろした玉ねぎを入れ、ひと煮立ちさせて作ります。休ませている間に出た肉汁も、加えるならしっかり沸騰させてから使います。

小さな子どもや高齢の方、妊娠中の方は、加熱が足りない肉で食中毒になると重症化しやすいとされています。一緒に食べる家族がいるときは、とくに表の条件を外さないようにしてください。

ラップで包んで保存容器に入れ、冷蔵庫で保存したローストビーフ

まとめ:焼いたあとも加熱を続け、温度計で仕上げる

ローストビーフのフライパンでの作り方と火の通し方の要点は、次の4つです。

  • 加工していない牛ももの塊、厚さ4〜5cmまでを選び、刺したり切れ目を入れたりしない
  • 全面に焼き色を付けたら、弱火・ふたで加熱を続け、余熱だけに任せない
  • 中心温度を測り、63℃で30分、65℃で15分、68℃で5分など、表の条件を守る
  • 条件を満たしてからホイルで休ませ、生肉と別のまな板で切り分ける

赤みの残る仕上がりと安全は、温度と時間を数字で管理すれば両立できます。表の条件を満たしていれば、あとは好みの温度で仕上がりを調整できます。まずは400g前後の塊肉と中心温度計を用意して、この手順で1本焼いてみてください。

焼いたあとのフライパンで、しょうゆと玉ねぎのソースを煮立てている様子

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参考リンク

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