鍋の具材を入れる順番と火の通り方には、覚えやすい原則があります。火が通りにくい根菜と、だしの出る鶏肉やきのこを先に入れ、豆腐や練り物は中盤、葉物と薄切り肉は食べる直前に入れる。これだけで「大根はまだ固いのに春菊はくたくた」という煮えむらが減ります。この記事では、具材ごとの入れどきと加熱時間の目安を一覧表にまとめ、切り方で煮える速さをそろえる方法、寄せ鍋・水炊き・しゃぶしゃぶ・キムチ鍋での順番の違い、肉や魚介を安全に食べるための火の通し方までを順に説明します。
基本は3段階|時間がかかる具とだしの出る具から入れる
鍋の具は、煮えるまでの時間がばらばらです。全部を同時に入れると、大根に火が通るころには春菊がくたくたになり、薄切り肉は固くなります。入れるタイミングを3回に分ければ、どの具も煮えごろで食べられます。
- 最初:大根・にんじん・ごぼうなどの根菜、白菜の芯、鶏もも肉、きのこ。煮えるのに時間がかかる具と、煮るほどつゆにうま味が出る具
- 中盤:魚の切り身、えび、肉団子、豆腐、油揚げ、練り物、長ねぎ。火は通りやすいが、少し煮て味を含ませたい具
- 最後:白菜の葉、春菊、水菜、にら、薄切り肉。さっと煮える具と、煮すぎると固くなる具
根菜は、火にかける前の冷たいつゆから入れて構いません。「土の中で育つ野菜は水から」と昔から言われるとおり、ゆっくり温度を上げたほうが、外側だけ煮崩れずに中まで火が通りやすくなります。反対に肉や魚介は、つゆが煮立ってから入れます。ぬるいうちに入れると、アクや臭みがつゆに出やすいとされるためです。
煮立ったあとは、表面が静かに揺れるくらいまで火を弱めます。ぐらぐら沸かし続けると魚や豆腐が崩れ、つゆも煮詰まります。
入れる順に皿を分け、鍋の中の置き場所も決める
切った具を「最初・中盤・最後」の3つの皿に分けて盛っておくと、食卓で順番に迷いません。鍋の中では、火の通りにくい具を、熱が伝わりやすい鍋底の中央寄りに置きます。豆腐や魚は崩れないよう端にまとめ、葉物は最後に上からのせます。

具材ごとの入れどきと加熱時間の目安
下の表は、つゆが静かに煮立っている状態での目安です。切り方や大きさ、火力、具の量で変わるので、時間だけで決めず、最後は見た目と固さで確かめてください。
| 具材 | 入れどき | 加熱の目安 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 大根・にんじん | 最初(冷たいつゆから) | 10〜15分 | 薄めに切る。竹串がすっと通ればよい |
| ごぼう | 最初 | 5〜10分 | ささがきにすると早く、香りも出る |
| 白菜の芯・長ねぎ | 最初〜中盤 | 5〜10分 | 煮るほど甘みが出る |
| きのこ | 最初 | 3〜5分 | うま味が出るので早めに。まいたけはつゆが黒っぽくなる |
| 鶏もも肉(ひと口大) | 煮立ったらすぐ | 10分前後 | だしが出る。中まで白くなるまで煮る |
| 肉団子・つみれ | 中盤 | 浮いてからさらに3〜5分 | 1個割って中の色を確かめる |
| 魚の切り身 | 中盤 | 3〜5分 | 煮立ったところへ入れ、動かさない |
| えび・あさり | 中盤 | えびは全体の色が変わるまで。あさりは口が開いてから少し煮る | 煮すぎると身が縮む |
| 豆腐・油揚げ・練り物 | 中盤 | 3〜5分 | 中まで温まればよい。はんぺんはふくらむので最後に |
| しらたき | 最初〜中盤 | 5分以上 | 煮崩れないので早めでよい。アク抜き済みでなければ下ゆでする |
| 春雨 | 後半 | 袋の表示どおり | つゆを吸うので量は控えめに |
| 白菜の葉・もやし | 後半 | 2〜3分 | しんなりしたら食べごろ |
| 春菊・水菜・にら | 食べる直前 | 30秒〜1分 | 色が鮮やかになったら引き上げる |
| 薄切り肉 | 食べる直前 | 1〜2分 | 広げて入れ、赤い部分がなくなるまで |
切り方と下ごしらえで煮える速さをそろえる
順番を守っても、根菜が厚すぎればなかなか煮えません。火の通りにくい具ほど薄く、小さく切るのが近道です。
- 大根・にんじん:5mm前後のいちょう切りや短冊切りに。ピーラーで薄くむけば、葉物と同じタイミングで入れられる
- 白菜:芯と葉を切り分け、芯は包丁を寝かせてそぎ切りにする
- 長ねぎ:斜め切りにして断面を広くする
- 急ぐ日:根菜を耐熱皿に並べてラップをかけ、電子レンジで少しやわらかくしてから入れる

肉・魚介は中心まで火を通し、箸を分ける
鶏肉、豚肉、肉団子、魚介は、表面の色が変わっても中が生のことがあります。厚生労働省は食中毒予防の目安として、中心部を75℃で1分以上加熱することを挙げています。家庭の鍋では温度を測れないので、大きめのものを1つ割り、中まで色が変わっているかを見てください。
カキなどの二枚貝は、同省がノロウイルス対策として、中心部を85〜90℃で90秒以上加熱することが望ましいとしています。入れたあと、つゆがもう一度しっかり煮立ってから、さらに十分に煮てください。生の肉や魚介を鍋に入れる箸やトングは、食べる箸と分けます。
寄せ鍋・水炊き・しゃぶしゃぶ・キムチ鍋で変わる順番
ここまでの順番は、味のついたつゆで煮る寄せ鍋が基準です。鍋の種類によって、先に入れるものが変わります。
| 鍋の種類 | 先に入れる | 後から入れる | 順番の考え方 |
|---|---|---|---|
| 寄せ鍋 | 根菜、鶏肉、きのこ | 葉物、薄切り肉 | だしの出る具を先に煮て、つゆにうま味を移す |
| 水炊き | 鶏肉(骨付きやぶつ切り) | 野菜、豆腐 | 鶏肉を水からじっくり煮てスープを取り、アクをすくってから野菜を足すのが一般的 |
| しゃぶしゃぶ | 白菜の芯、にんじん、きのこ、豆腐 | 肉、葉物 | 火の通りにくい野菜を先に入れておき、肉は食べる分だけ1〜2枚ずつ湯にくぐらせる |
| キムチ鍋 | 豚肉、キムチ、白菜の芯 | 豆腐、もやし、にら | 豚肉とキムチを先に炒めてからつゆを注ぐ作り方もある。にらは最後にのせる |
市販の鍋つゆを使うときは、パッケージに書かれた順番も確かめてください。
途中で具を足すときは少しずつ
冷たい具を一度にたくさん足すと、つゆの温度が下がり、煮えるまでに時間がかかります。火を少し強め、数回に分けて入れてください。生の肉や魚介を足したら、もう一度しっかり煮立つまで、周りの具も取らずに待ちます。煮えた具は端に寄せ、新しい具と混ざらないようにすると、どれが食べごろか迷いません。

よくある質問
肉は先に入れるのと後から入れるの、どちらが正解ですか?
肉の種類と切り方で変わります。ひと口大の鶏もも肉や骨付き肉、肉団子は、中まで火が通るのに時間がかかり、だしも出るので、葉物より先に入れます。豚や牛の薄切り肉はすぐ火が通り、煮すぎると固くなるので、食べる分だけ後から入れてください。
具材を全部いっぺんに入れてもいいですか?
入れても構いませんが、葉物が煮えすぎやすくなります。一度に入れるなら、薄く切った根菜を鍋底に敷き、肉や豆腐、きのこを並べ、葉物をいちばん上にのせてふたをします。葉物はつゆに沈まず蒸気で火が通るので、くたくたになりにくくなります。肉は冷たいつゆから煮ることになるので、中まで色が変わったのを確かめてから食べてください。

アクは全部取ったほうがいいですか?
気になる分だけで十分です。肉や魚介を入れて煮立ったときに浮く、灰色がかった泡をすくえば、つゆが濁りにくくなります。取り続けると、つゆまで減ってしまいます。
火が通ったかどうかは、どこで見分けますか?
根菜は竹串や箸がすっと通るか、肉は中まで色が変わっているか、魚は身の透明感がなくなり、箸でほぐれるかを見ます。迷ったら大きめのものを1つ取り出し、割って中を確かめてください。
まとめ|固い具とだしの出る具、崩れやすい具、葉物の順に
鍋の具材を入れる順番と火の通り方は、次の点を押さえれば迷いません。
- 根菜は冷たいつゆから、鶏肉やきのこは煮立ったら最初に入れる
- 魚の切り身、豆腐、練り物は中盤。葉物と薄切り肉は食べる直前に
- 火の通りにくい具ほど薄く切り、鍋底の中央寄りに置く
- 水炊きは鶏肉から、しゃぶしゃぶは野菜から、と鍋の種類で順番を変える
- 肉・魚介・カキは中心までしっかり加熱し、生の具を入れる箸と食べる箸を分ける
次に鍋をするときは、切った具材を「最初・中盤・最後」の3つの皿に分けて食卓に並べるところから試してみてください。


