秋キャンプで寒いのは、夜明け前の冷え込みと、地面から伝わる冷えです。対策は、行き先の最低気温を調べ、それに合う寝袋、地面の冷えを断つマット、重ね着の順に決めていくと、足りない物がはっきりします。この記事では、夏にキャンプを始めて初めて10〜11月に泊まる家族に向けて、寝袋の温度表示の読み方、手持ちの夏用寝袋を使うときの重ね方、汗冷えしない服の組み合わせ、子ども連れで気をつけること、撤収を決める目安をまとめました。テントや車の中で火を使って暖を取ると一酸化炭素中毒の危険があるので、寝るときは火に頼らない前提で準備します。
まず行き先の最低気温を調べ、それに合う寝袋を決める
夏と同じ装備で秋に泊まると、寝入りは平気でも、明け方に寒さで目が覚めます。晴れて風の弱い夜は、地面の熱が空へ逃げて冷え込みが強まるためです(放射冷却)。昼の暖かさは当てにならないので、準備は「その場所の朝は何℃まで下がるか」を知るところから始めます。
最低気温の調べ方
- キャンプ場の公式サイトやSNSで、朝晩の気温や霜の情報を探す。載っていなければ予約のときに尋ねる
- 気象庁の「過去の気象データ検索」で、近くの観測地点の、過去数年の同じ時期の最低気温を見る
- キャンプ場のほうが観測地点より標高が高ければ、その分を引く。標高が100m上がると気温はおよそ0.6℃下がるのが一般的な目安で、500m高ければ約3℃低いと見積もる
谷底や盆地のキャンプ場は冷たい空気がたまりやすく、計算より下がることがあります。出発が近づいたら天気予報の最低気温も見て、低いほうに合わせてください。

寝袋の温度表示は「快適」の側で読む
寝袋には「快適使用温度(コンフォート)」と「下限温度(リミット)」が書かれていることがよくあります。欧州規格(EN 13537)と、それを引き継いだ国際規格(ISO 23537)の試験方法による表示です。メーカーの説明では、快適使用温度は寒さに弱い人が力を抜いた姿勢で寒さを感じずに眠れる温度、下限温度は寒さに強い人が寝袋の中で体を丸めて眠れる温度。さらに低い「エクストリーム」は低体温症のおそれがある温度域で、選ぶ基準にはしません。
初めて秋に泊まるなら、見るのは快適使用温度です。これが行き先の最低気温と同じか、それより低い寝袋を選びます。余裕の取り方はメーカーで違い、「最低気温より5℃低い温度に対応したものを」という案内もあれば、表示は使える下限の温度で「快適なのは表示に5〜10℃足した温度域」という案内もあります。基準がそろっていないので、数字だけを比べず、製品の説明書きを読んでください。寒さの感じ方には個人差があるため、寒がりの人と子どもの分は余裕を大きめに取ります。
| 行き先の最低気温 | 選ぶ寝袋の快適使用温度 | 夏用の寝袋しか無いとき |
|---|---|---|
| 10℃前後 | 10℃以下。できれば5℃前後 | 下の重ね方を試す |
| 5℃前後 | 5℃以下。できれば0℃前後 | 重ねるだけに頼らず、合う寝袋を借りるか買う |
| 0℃前後 | 0℃以下。できれば−5℃前後 | 初めてなら、標高の低い場所かコテージに変える |
※ 温度の区分は目安です。製品ごとの表示と説明に従ってください。
夏用の寝袋しか無いときの重ね方
- 寝袋の中に、インナーシーツやフリースの毛布を入れる
- 封筒型の寝袋を2枚重ねる。上から家の毛布や掛け布団を掛ける
- 子どもに大人用を使わせるなら、余った足元を折り返すか、着替えを詰める(足元に空間が余ると保温には逆効果とされる)
どこまで暖かくなるかは組み合わせ次第です。不安なら、寝袋を借りられるキャンプ場を選びます。
背中の冷えはマットで断ち、服は3層と寝るとき用で備える
寝袋の下に敷くマットの役目
寝袋の中綿は、体の下になる背中側では体重でつぶれ、空気の層がほとんど残りません。そこから冷えた地面に熱を奪われるので、上に何枚掛けても背中と腰が寒いままになります。寝袋を買い替えるより先に、マットを見直します。
マットの断熱の力を「R値」という数字で示している製品があり、数字が大きいほど冷えを通しにくくなります。厚ければ暖かいとは限らない、とメーカーも説明しています。どのくらいの値が要るかは気温で変わるので、メーカーが示す季節ごとの目安と、夏に使ったマットの表示を見比べてください。子どもは寝ている間にマットから転がり落ちるので、家族分をすき間なく並べます。
服は3層に分け、寝るとき用を別に持つ
- 肌着:汗を吸って広げ、肌を乾いた状態に保つ。綿のTシャツは乾きにくく、汗で湿ったまま夜を迎えると体が冷えるので、化繊やウールの長袖を選ぶ
- 中間着:フリースや薄手のダウンなど。空気をためて保温する
- 上着:風と雨を防ぐ。雨具の上下で兼ねられる
設営で汗をかいたら1枚脱ぎ、日が傾いたら寒くなる前に着ます。首・手首・足首は服のすき間から冷気が入るところなので、ネックウォーマー、手袋、厚手の靴下でふさぎます。寝るときは昼の服のままにせず、乾いた肌着と靴下に替え、ニット帽をかぶります。それでも寒ければ、フリースやダウンを着たまま寝袋に入ってかまいません。

テントと車の中で火は使わない。寝床は湯たんぽで温めておく
テントや車の中では、炭・ガス・灯油などを燃やす暖房器具やコンロ、七輪、ランタンを使わないでください。一酸化炭素は色もにおいもなく、気づかないうちに中毒になります。テントの中の明かりは、電池式のLEDランタンにします。
消費者庁やNITE(製品評価技術基盤機構)は、テントの中など換気が不十分な場所でたき火をしたり、コンロやストーブ、ランタンを使ったりすると一酸化炭素中毒に至るおそれがあるとして、必ず屋外の風通しのよい場所で使うよう呼びかけています。NITEの実験では、テントの中のたき火で約9分、フライシートを閉めた1人用テントでガソリン式のストーブを使うと約15分で、一酸化炭素が危険な濃度(200ppm)を超えました。NITEが公表した事故例には、2008年11月にキャンプ場のバンガローで七輪を使っていた2人が亡くなったものもあります。入口を開けておけば使える、という話ではありません。テントの外で使うときも、風向きによっては燃えたあとの空気が中にたまることがあるので、火はテントから離し、寝る前に消してください。
湯たんぽとカイロは寝る前まで
火を使わずに寝床を温めるなら湯たんぽです。お湯はテントの外で沸かし、栓を締めてカバーに入れ、寝る少し前に寝袋の足元へ入れます。寝袋に入るときに取り出すのが、低温やけどを防ぐ使い方です。消費者庁は布団を暖めたら就寝前に湯たんぽを出すよう呼びかけ、NITEは厚手のタオルや専用カバーで包んでも低温やけどを負うことがあるとしています。心地よい温かさでも、眠って同じ場所に長く当たると深いやけどになるためです。使い捨てカイロは起きている間に服の上から使い、寝るときには外します。

子ども連れで気をつけること
- 子どもは遊びに夢中だと、寒くても口に出さない。夕方からは背中や首すじに手を入れ、冷えや汗の湿りを確かめる。汗をかいた肌着は夕食の前に替えさせる
- 夜中のトイレに備え、上着・靴・ライトをテントの入口にまとめておく。寝る直前にも一度連れて行く
- 子どもは皮膚が薄く、低温やけどが重くなりやすい。子どもの寝袋に湯たんぽやカイロを残さない
寒くて眠れないとき、撤収を決めるとき
夜中に寒さで目が覚めたら、湿った肌着と靴下を乾いた物に替え、帽子をかぶって首元をふさぎます。余った上着や毛布は寝袋の上に掛け、着ない服はマットの下に敷きます。
それでも震えが止まらないとき、子どもが泣いて眠れないときは、朝を待たずに車や管理棟へ移ります。医療の解説では、低体温症は激しい震えから始まり、進むと震えが止まって動きが鈍くなり、考えがぼんやりするとされています。震えが収まったから大丈夫、とは限りません。呼びかけへの反応が鈍いときは、濡れた服を脱がせて乾いた毛布でくるみ、119番に連絡してください。
車に移っても、車内でコンロやストーブは使いません。エンジンをかけて暖房を使うなら、排気口のまわりがふさがっていないことを確かめ、かけたまま眠り込まないようにします。JAFのテストでは、排気口が雪でふさがれた車でエンジンをかけ続けると、車内の一酸化炭素の濃度が短い時間で上がりました。「寒ければ夜中でも車に移る、帰る」と出発前に家族で決めておくと、迷わずに動けます。
よくある質問
一酸化炭素警報器があれば、テントの中でストーブを使えますか?
使えるとは考えないでください。警報器は、万一のときに早く気づくための補助です。電池切れや故障もありえるので、鳴らなかったから安全、とはなりません。寝るときの暖かさは、寝袋・マット・着る物で確保します。
電源サイトなら、電気毛布や電気ストーブを使ってもいいですか?
キャンプ場によって違います。持ち込める電気器具のルールと、サイトで使える電気の容量を予約前に確かめ、器具の消費電力が収まるかを見てください。電気で温める寝具でも低温やけどは起きるので、取扱説明書の使い方を守ります。ブレーカーが落ちても眠れるよう、寝袋とマットは電気なしで足りる物を用意します。
手持ちのマットが薄い銀マットだけです。買い足さないとだめですか?
まず重ねてみてください。銀マットの上に、厚手のラグや毛布、家にあるヨガマットやジョイントマットを敷くと、地面との間の層が増えます。それでも背中が冷たいようなら、R値の表示があるマットを1枚足します。

まとめ
準備は次の順に進めます。
- キャンプ場の情報と、近くの観測地点の過去の気温から、行き先の最低気温をつかむ
- 快適使用温度がその気温以下の寝袋を用意する。夏用しかなければ重ね、足りなければ借りる
- マットで地面の冷えを断つ
- 肌着・中間着・上着を重ね、寝るとき用の乾いた服と靴下、ニット帽を別に持つ
- テントと車の中では火を使わない。寒さに耐えられなければ、朝を待たずに車へ移るか撤収する

まずは行きたいキャンプ場の標高と、近くの観測地点の過去の同じ時期の最低気温を調べ、手持ちの寝袋の温度表示と見比べるところから始めてください。

