黒豆の皮にしわが寄るいちばんの原因は、豆が煮汁から顔を出して空気に触れることです。煮ている間は落とし蓋をのせ、煮汁が減ったら差し水をして、豆が汁の中にある状態を保ちます。煮上がったあともすぐに取り出さず、煮汁に浸けたまま冷ますと、ふっくらしたまま味が入ります。この記事では、調味液に浸してから煮る手順を軸に、しわが寄りやすい場面ごとの対策、砂糖を入れるタイミング、重曹や鉄くぎの役割、圧力鍋を使うときの注意をまとめました。浸す時間や煮る時間は、産地の専門店・農協・農林水産省のレシピで幅があるため、その違いもあわせて紹介します。
黒豆にしわが寄るのは、豆が煮汁から出たとき
煮豆の皮にしわが寄る場面は、「豆の表面が煮汁から出たとき」にほぼ集まっています。JA全農のWebマガジン「Apron」は、豆が煮汁から出て空気に触れるとしわが寄ると説明しています。丹波篠山の黒豆専門店・小田垣商店のレシピにも、煮汁から豆が顔を出すとしわになるという注意書きがあります。農林水産省の「にっぽん伝統食図鑑」に載っている京都の黒豆煮も、表面にしわができないよう差し水をしながら煮る作り方です。
何時間も煮るあいだに煮汁は蒸発して減り、ふくらんだ豆は水面に近づいていきます。気をつける場面と対策を整理すると、次のようになります。
| 場面 | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 煮ている途中 | 煮汁が減って豆の頭が出る | 差し水で豆がかぶる量を保ち、落とし蓋をのせる |
| 火が強いとき | 豆が躍って煮くずれる。吹きこぼれて煮汁も減る | 吹きこぼれない程度のごく弱火にする |
| 煮上がった直後 | 熱いうちに煮汁から上げてしまう | 煮汁に浸けたまま冷ます |
| 味を含ませている間 | 鍋や器の中で豆の表面が汁から出る | 豆が浸る量の煮汁を残しておく |
どの対策も、やっていることは「豆を最後まで煮汁の中に置く」の一つです。しわを防ぐために特別な材料を足すわけではありません。

調味液に浸してから煮る基本の手順
砂糖やしょうゆを溶かした調味液に乾いた豆を浸し、その汁ごと煮る方法です。小田垣商店、JA全農、農林水産省のレシピはいずれもこの形でした。分量と時間はレシピごとに違うので、幅のある目安として見てください。
- 黒豆(乾燥):300g
- 水:1.6〜1.8リットル(豆の重さの5〜6倍ほど)
- 砂糖:150〜300g(豆の重さの半分〜同量。JA全農は、多いほうが保存がきくとしています)
- しょうゆ:大さじ1〜大さじ1と2/3
- 塩:小さじ1/2(入れないレシピもあります)
1. 調味液を沸かして、黒豆を浸す
鍋に水と調味料を入れて沸かし、砂糖を溶かします。黒豆はそっと洗います。小田垣商店は、ゴシゴシ洗うと皮が破れると注意しています。洗った豆を調味液に入れ、ふたをして置きます。
浸す時間は、農林水産省のレシピが4〜5時間、小田垣商店が約5時間、JA全農が8時間〜一晩です。豆を入れるときの温度も分かれていて、小田垣商店は熱い煮汁に入れ(水から戻すより皮が破れにくいとしています)、農林水産省のレシピは調味液を冷ましてから入れます。どちらかに決めて、同じレシピの時間で通すと迷いません。

2. 火にかけてアクを取り、差し水をする
浸した鍋をそのまま中火にかけ、煮立つ手前で火を弱めて、浮いてきた白い泡をすくいます。小田垣商店とJA京都市女性部のレシピでは、ここで1/2カップほどの水を差し、もう一度煮立ったら同じ量をもう1回加えます。
3. 落とし蓋とふたをして、ごく弱火で煮る
豆の上に落とし蓋をのせ、鍋のふたもして、吹きこぼれないごく弱火で煮ます。落とし蓋には、水でぬらして固く絞ったガーゼ、鍋の大きさに切ったクッキングペーパー、中心に穴をあけたアルミホイルが使えます。豆の表面に沿うものなら、浮いてきた豆も空気に触れにくくなります。
煮る時間の目安は、JA全農が4〜6時間、小田垣商店が5〜6時間、農林水産省のレシピが約8時間です。小田垣商店は「途中でふたはとらない」としつつ、煮汁が蒸発して減ったら差し水をするよう書いています。ふたを開けるのは煮汁の量を確かめるときだけにして、豆の頭が出そうなら水を足します。
4. 煮汁に浸けたまま冷まして、味を含ませる
豆を指でつまみ、全体がつぶれるくらい柔らかくなっていれば煮上がりです(JA全農の目安)。火を止めたら、豆を取り出さずにそのまま冷まします。小田垣商店は一昼夜おいて味を含ませるとしており、味付け前のゆで黒豆についても、煮汁に浸けたまま完全に冷ましてから汁を切るとしわが寄らないと説明しています。できたてを器に移したくなりますが、冷めるまでは鍋の中に置いておきます。
砂糖の入れ方・重曹・鉄くぎ・圧力鍋で変わること
砂糖を後から入れるなら、数回に分ける
製菓材料の専門店・富澤商店は、調味液に一晩浸してから煮る方法を関西風、水で戻して柔らかくゆでてから調味料を加える方法を関東風として紹介しています。関東風は比較的短い時間で仕上がり、表面にしっかり甘みが付くそうです。
後から砂糖を入れるときは、一度に全部入れないようにします。日本豆類協会は、いんげん豆などの煮豆の解説で、砂糖を一度に入れると煮汁の糖分が急に濃くなり、浸透圧で豆の中の水分が煮汁へ移って豆が硬くしまると説明しています。同協会の手順は、砂糖を3回に分け、そのつど火を止めて冷めるまで待つものです。丹波篠山のいのうえ黒豆農園の黒豆レシピも、砂糖を半量ずつ2回に分けています。最初から調味液に浸す方法には、この「分けて入れる」工程がありません。
重曹は、早く柔らかく煮るためのもの
富澤商店は、黒豆200gに重曹小さじ1/4を加えると煮る時間を短くできるとしています。JA京都市女性部のおせち用レシピは、黒大豆300gに小さじ1/2を調味液に加えていました。製菓材料メーカーの共立食品は、重曹を使うと豆が早くふっくら煮え、皮も破れにくくなると説明しています。一方、小田垣商店・JA全農・農林水産省のレシピには重曹が入っていません。なくても煮える材料なので、使う場合はレシピの分量に合わせます。
鉄くぎは、しわではなく色のため
さびたくぎや鉄まんじゅう(鉄玉子など、料理用の鉄のかたまり)を入れるのは、色を黒く保つためです。農林水産省は、くぎの鉄分によって豆の退色を防ぎ、美しく仕上げられると説明しています。参照したレシピでは、どれも色のための材料として扱われていて、しわ対策とは別の話です。くぎを使うなら、JA京都市女性部のレシピのように、きれいに洗って布袋に入れておきます。
圧力鍋は、加圧後も煮汁に浸けておく
小田垣商店の圧力鍋レシピは、沸かした調味液に一晩浸けてから20分加圧し、自然に冷めるのを待って、さらに1日浸けておく流れです。高圧タイプの鍋は加熱1分とされ、鍋の種類によって加圧・加熱時間が異なるとも書かれています。豆を入れてよい量や加圧時間は機種で違うので、取扱説明書の指示を優先してください。

よくある質問
調味液に浸している途中で、皮にしわが寄りました。失敗ですか?
失敗ではありません。小田垣商店は、煮汁に浸けてしばらくすると豆にしわが寄るものの、そのまま浸けておけばふくらんでくると説明しています。途中で取り出したりせず、豆が汁に沈んだ状態で時間まで待ちます。
差し水は何のためにするのですか?
一つは、減った煮汁を補って豆を汁の中に保つためです。もう一つ、日本豆類協会は、いんげん豆やあずきなどの下ゆでについて、冷たい水を加えて煮汁の温度をいったん下げると、豆の表面と内部の温度差が縮まり、煮えむらを防げると説明しています。同協会は、ゆでこぼしをするなら必ずしも行わなくてよいとも書いています。黒豆のしわ対策としては、まず煮汁の量を保つための水と考えておくと分かりやすいです。
水で戻してから煮る場合、どのくらい浸せばよいですか?
富澤商店の関東風は、豆の4〜5倍の水に6時間以上、小田垣商店のゆで黒豆は、豆の重さの3〜4倍の水に一晩(夏場は冷蔵庫)です。日本豆類協会は、豆全般の戻し方として、皮のしわが伸びてふっくらふくらんだ状態を目安に挙げています。戻りきらないうちに火にかけないようにします。
煮た黒豆はどう保存すればよいですか?
煮汁ごと清潔な容器に移し、豆が汁に浸った状態で冷蔵庫に入れます。汁から出た部分は、保存している間にもしわが寄りやすくなります。日持ちは砂糖の量で変わり、JA全農は砂糖が多いほうが保存がきくとしています。甘さを控えて煮たときほど、早めに食べ切ってください。味付け前のゆで黒豆については、小田垣商店が、ゆで汁を切って保存袋に小分けし、冷凍する方法を紹介しています。

まとめ
黒豆がしわにならない煮方のコツは、浸すところから食べるまで、豆を煮汁の中に置いておくことに尽きます。
- 煮ている間は落とし蓋をして、煮汁が減ったら差し水をする
- 火は吹きこぼれないごく弱火にして、豆を躍らせない
- 煮上がっても取り出さず、煮汁に浸けたまま冷ます
- 砂糖を後から入れる煮方では、数回に分けて加える
- 鉄くぎは色、重曹は柔らかさのためのもので、しわ対策とは別に考える
浸す時間は4〜5時間から一晩、煮る時間は4〜8時間と、レシピによって幅があります。豆の袋に煮方が書かれていれば、まずその分量と時間に合わせるのが確実です。

黒豆を洗う前に、鍋の大きさに合う落とし蓋(クッキングペーパーかガーゼ)を用意しておきましょう。

